IPMSMのモデル

 世の中電動化が流行ってモータの重要性が一般にも理解される世の中になってきてい。実はすでに発電された電力の半分以上がモータによって消費されており、その手の論文の冒頭にはモータの電力効率の向上が重要である・・・というくだりが書いてあります。日本電産さんのHPにも書いてありました(1. 世界の電力不足を解消する(日本電産))。
 モータの需要に伴い関連分野の技術への参入したいという方も増えてくると思いますので、この分野の入りとしてモータモデルがどのような手順で導出されるのか追ってみたいと思います。
 モデルを考える上で下の絵をイメージとして進めていきたいと思います。



 モータは電圧を印加して電流を制御することになりますので、回路モデルで表現することを考えていこうと思います。回路を考える前にモータの巻き線を貫く磁束について軽く触れておきましょ。$\psi_u,\psi_v,\psi_w $をそれぞれの巻き線を貫く磁束とすると、自己インダクタンス、相互インダクタンス、ロータの磁石の磁束の要素があり、$\theta$はロータの回転位置で以下の絵のようにN極がU相を向いているときに0度とします。

$$\begin{align}
\psi_u &= L_u(\theta)i_u+M_{uv}(\theta)i_v+M_{uw}(\theta)i_w+\psi cos\theta \\
\psi_v &= M_{vu}(\theta)i_u+L_{v}(\theta)i_v+M_{vw}(\theta)i_w+\psi cos(\theta-\frac{2\pi}{3}) \\
\psi_w &= M_{wu}(\theta)i_u+M_{wv}(\theta)i_v+L_{w}(\theta)i_w+\psi cos(\theta-\frac{4\pi}{3})
\end{align}$$

と書くことができます。見慣れた回路方程式にはない要素として、インダクタンスが$\theta$の関数になっています。これは突極性があるモータのロータの構造によるものです。詳しくはまた別で触れますが、ロータの構造によって、回転位置によって磁束が通る経路に変化がありますので、インダクタンスが$\theta$依存します。
 それでは入力電圧と電流の関係を表す回路方程式を考えていきます。回路一周する経路で電圧方程式を立てていくのが定石ですが、中性点電圧$v_n$を用意、モータの各相の端子にはそれぞれ電圧を印加できるとして$v_u,v_v,v_w$とします。さらに、巻き線の磁束が変化することによる逆起電圧も加味して
$$
\begin{align}
v_u-v_n &= Ri_u+\frac{d\psi_u}{dt} \\
v_v-v_n&= Ri_v+\frac{d\psi_v}{dt} \tag{1}\\
v_w-v_n&=Ri_w+\frac{d\psi_w}{dt}\\
i_u+i_v+i_w &= 0
\end{align}
$$
と電圧方程式を立てました。中性点電圧にも依存した式に見えるが、上式を少し変形してみる。
$$
\begin{align}
\dfrac{1}{R}\left(v_u-v_n+v_v-v_n+v_w-v_n- \frac{d\psi_u}{dt}- \frac{d\psi_v}{dt} -\frac{d\psi_w}{dt}\right)=0 \tag{2}
\end{align}
$$
細かい式変形は気が向いたら別記事に書きますが$\frac{d\psi_u}{dt}+ \frac{d\psi_v}{dt} +\frac{d\psi_w}{dt}=0$となります。このとき、
$$
\begin{align}
L_u(\theta)&=L_{ave}-L_{amp}\cos2\theta \\
L_v(\theta)&=L_{ave}-L_{amp}\cos(2\theta+\frac{2}{3}\pi) \\
L_w(\theta)&=L_{ave}-L_{amp}\cos(2\theta+\frac{4}{3}\pi) \\
M_{uv}(\theta)&=M_{vu}(\theta)=-\frac{1}{2}L_{ave}-L_{amp}\cos(2\theta+\frac{4}{3}\pi) \\
M_{vw}(\theta)&=M_{wv}(\theta)=-\frac{1}{2}L_{ave}-L_{amp}\cos2\theta \\
M_{uw}(\theta)&=M_{wu}(\theta)=-\frac{1}{2}L_{ave}-L_{amp}\cos(2\theta+\frac{2}{3}\pi) \\
\end{align}
$$
と考えるとうまくいきます。逆にこう置かないとうまく消えてくれないので、この自己インダクタンス、相互インダクタンスの仮定がモータ設計的に正しいのかは気になるところですが、そこまで理解できてません。(誰か教えてください。)続き・・・
$$
\begin{equation}
v_n =\frac{1}{3}(v_u+v_v+v_w) \tag{3}
\end{equation}
$$
という関係が得られますので、電圧方程式は
$$
\begin{align}
v_u-\frac{1}{3}(v_u+v_v+v_w) &= Ri_u+\frac{d\psi_u}{dt} \\
v_v-\frac{1}{3}(v_u+v_v+v_w)&= Ri_v+\frac{d\psi_v}{dt} \tag{4}\\
v_w-\frac{1}{3}(v_u+v_v+v_w)&=Ri_w+\frac{d\psi_w}{dt}\\
i_u+i_v+i_w &= 0
\end{align}
$$
入力は入力電圧とその平均との差分として左辺に現れて、電流はその微分方程式を解くことで得られる。(4)からわかることは、電流は入力電圧$v_u,v_v,v_w$とその平均の差で決まることがわかる。ここで、入力電圧に対してバイアスを加えてみる。
$$
\begin{align}
v_u = \tilde{v}_u+v_n\prime \\
v_v = \tilde{v}_v+v_n\prime \tag{5}\\
v_w = \tilde{v}_w+v_n\prime
\end{align}
$$
としたときは(3)より、$$v_n=\frac{1}{3}(\tilde{v}_u+\tilde{v}_v+\tilde{v}_w)+v_n\prime$$となる。電圧方程式に戻してあげると
$$
\begin{align}
\tilde{v}_u-\frac{1}{3}(\tilde{v}_u+\tilde{v}_v+\tilde{v}_w)&= Ri_u+\frac{d\psi_u}{dt} \\
\tilde{v}_v-\frac{1}{3}(\tilde{v}_u+\tilde{v}_v+\tilde{v}_w)&= Ri_v+\frac{d\psi_v}{dt}\\
\tilde{v}_w-\frac{1}{3}(\tilde{v}_u+\tilde{v}_v+\tilde{v}_w)&=Ri_w+\frac{d\psi_w}{dt}\\
i_u+i_v+i_w &= 0
\end{align}
$$
よって、入力すべてに加えたバイアス$v_n\prime$は電圧方程式に現れず、電流は常に印加したい電圧とその平均で決まることがわかった。以上から

$$v_u+v_v+v_w=0$$

という条件を付加しても、電圧方程式の解としては一般性を失わない。もし、上式が成り立たない入力を選択していたとしても、それを消せる用に常に適当なバイアス$v_n^\prime$を加えて式を眺めなおすことが許される。この条件を付与することによって、中性点$v_n=\frac{1}{3}(v_u+v_v+v_w)=0$となり、各相を独立のループで見ることもできるようになる。ここでやっと見慣れた電圧方程式の形を得ることができて
$$
\begin{align}
v_u&= Ri_u+\frac{d\psi_u}{dt} \\
v_v&= Ri_v+\frac{d\psi_v}{dt}\\
v_w&=Ri_w+\frac{d\psi_w}{dt}\\
i_u+i_v+i_w &= 0
\end{align}
$$
となる。微分演算を$\frac{d}{dt}\rightarrow s$として磁束の項も書き下すと
$$
\begin{pmatrix} v_u \\ v_v \\ v_w\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} R+sL_u(\theta) & sM_{uv} & sM_{uw}(\theta) \\
sM_{vu}(\theta) & R+L_v(\theta) &sM_{vw}(\theta) \\
sM_{wu}(\theta) & sM_{wv}(\theta) &R+L_w(\theta)
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} i_u \\ i_v \\ i_w\end{pmatrix}
+s\psi \begin{pmatrix} \cos\theta \\ \cos(\theta-\frac{2}{3}\pi) \\ \cos(\theta-\frac{4}{3}\pi) \end{pmatrix}
$$
 モータの本は数多く出回っていますが、中性点電圧に触れながら回路方程式を立てている文献は中々ありませんのでそこから触れてみました。唯一、新中先生の上巻p28あたりから記載がありますので、ご興味がある方はご確認ください。途中省いているところは折を見て追記していこうと思います。
 これでIPMSMモータのモデル一般的な形を導出できたのですが、制御に使うまでにはまだ壁がありますので引き続き手を動かして頑張りましょう。

誰かの参考になれば幸いです。